2014年9月11日木曜日

うつわが大好きな理由

 江戸切り子とバカラグラスを持ってみると、一瞬でその手触りが違うなぁって感じます。江戸切り子はザラザラと削りたての表面の感覚があるのですが、バカラグラスは滑らかで手触りがいい。
 
 自宅でのんびりお酒を飲む時にはそりゃぁ手触りのいいバカラがいいと思うのが普通なんですが、それでも江戸切り子がいいなって思う瞬間があるんです。それは、よく見てみると切り子の一つ一つのカット面が均等でないこと、職人さんが一つずつ手で線を入れているところなんかが想像出来るから。

 引出物で5000円前後の安価な価格で手に入る切り子グラスが、実際工場に行ってみると凄く手間ひまかけて作られている。熱い中、一つ一つのグラスに息を吹き込んで…息を吹き込んでいるというよりは息吹を吹き込んでいると言ったほうが正しくて、そこで命が生まれるところを何度となく目の当たりにすると、どうにもこうにもこれが好きで堪らなくなる。

 人の手が作ったものがいいって意見は安直なような気がしてしまうけれど、そういうものに囲まれて生きるのが自分は好きだと思う。

 江戸切り子、江戸硝子についてはもう一つ心に残っている事があって、ある日盛大に叱られた事がある。自分はプライドが高くて少しばかりセンスがあるともて囃された事があるものだから、他人の作ったものに対して、なんでこうなっちゃうわけ?と、平気で言ったりしたのだけれど、誰かが気持ちを込めて作ったものにそんな言い方はないだろう?って。

 その時は自分が取材した江戸硝子の内容がぞんざいな扱いを受けていたように思ったので、フグのように膨れたまま、出来上がった冊子を持って自分のデスクに戻ったんだけど、単純な怒りと同時に作った人の気持ちなんて考えられもしなかった自分に腹を立てていたのだと思う。

 「うつわ」というものは形があって、その形に何かが納まるのだけど、ぴったり入ったり居心地よく入ったり、その様が美しいのが本当に好きで自分の仕事とは全く関係のない範疇の話なのですが、いいなって思う時がある。

 いつも想い通りに物事を運びたいので、ああしてください、こうしてくださいっていろんなところにお願いして、出来た時に一発オッケーが出た時ハイタッチするのが本当に楽しい。私が扱っているのはいつも見えない「うつわ」なのだけれど、うつわと形を作る仕事をこれからも続けて行こうと思う。 

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